忘れたっていい
翌日はとても寒かった。
前日までの暖かさが嘘のようだ。
とりあえずヒートテックの上下だけでも 買っていこう。
実家に着くと母が嬉しそうに出迎えてくれた。
……が。
薄着なのよ😭
元来慎重派の母は風邪をひかないよう とにかく着込んで万全にしていた。
それが薄手のセーターの下にタンクトップだ。
私ですら、長袖のヒートテックを着てたというのに。
「これ買ってきたからきてねっ」
「なにこれ。子供じゃないんだから別に大丈夫なのよ」
「取り繕い」
認知症の症状のひとつだ。
分かってはいても 風邪ひくのよ……
頼むから着てくれ😭
心の叫びが顔に出ぬよう 穏やかに話す。
これは手強い……
いやいや これはマジで大変なやつだ。
妄想もかなりあった。
こういうの本当にあるんだ……
ありえないことをいう。
「そんな事ないよ」というと
「何も分かってない」とかえってくる。
怒りっぽくもなっている。
とにかく本来の母の姿の対極と向き合ってる感じ。
でも本人にも自覚があり
「最近、わすれちゃうのよ……なんかすごい忘れちゃうの。いやになるわ……」
母が悲しそうにそういった時
父が見たこともない優しい顔で
「忘れたっていいじゃない。 忘れていいんだよ。だから生きていけるんだよ」
涙をこらえすぎて、喉だけがしゃくりあげてしまいそうだった。
微笑み合う父と母を見て
がんばろっ ...なんかそう思えた。
このブログへのコメントは muragonにログインするか、
SNSアカウントを使用してください。